・Auto Terra Super
【Auto Terra Super】SPECIFICATIONS
製造メーカー名
発売年
型式
画面サイズ
レンズ
ファインダー
ファインダー倍率
露出計
フィルム感度対応範囲
シャッター
シャッタースピード
セルフタイマー
シンクロ接点
フィルム巻き上げ
フィルム巻き戻し
電源
サイズ
重量
販売価格
日本の大卒平均初任給
寺岡精工所
1959年
距離計連動式カメラ
36mm × 24mm
Auto terra Plover 45mm F2.8 絞り羽5枚
アルバタ式ブライトフレーム入り、近距離補正マーク付き、二重像合致式距離計連動式ファインダー(基調線48mm )
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レンズシャッター コパル製
B・1~1/500秒 ライトバリュー式
有り
シンクロMX切り替え
スプリングによる(ボディ内蔵スプリングで約8枚、別売りグリップモーター併用で20枚撮り、セルフコッキング方式(フィルム巻き上げと同時にシャッターがチャージされる方式)
クランク式
ー
148×93×72mm
860g(グリップモーター 440g)
14500円 、ケース1300円
17,354円。
作例
感想
デザインというのは個人の好みもありますが、このカメラシリーズのデザインははモデルチェンジを行うに従い洗練されていきます。それは撮影を行いうためにも撮影という行為を前向きにさせます。またシャッターを押した時の感触もとても良いものです。
カメラの底のゼンマイをいっぱいに巻くことで7枚の自動巻き上げ撮影ができます(公式では8枚の巻き上げができると言われていますが実際には7枚です)。この枚数というのは撮影作業を行なっていると意外と少なく、7枚撮影の後に巻き上げをうっかりと忘れているとシャッターが切れないという状況になり、せっかくのシャッターチャンスを逃すことになります。そういう事態にならぬよう2、3枚撮影したら撮影の合間にゼンマイを常にギコギコ巻くということになります。それはそれでこのカメラの楽しさですが、自動巻き上げというシステムにおいては少し中途半端な巻き上げ枚数かなと感じてしまいます。当時は既にドイツでロボットロイヤル36という最高級のカメラが目一杯の巻き上げで15、16枚の撮影ができ、このカメラの2倍の撮影枚数を巻き上げができることでも当時の日本とドイツの技術の差が見受けられます。それでいながらこのカメラの機構を世界初と謳っていたのですから当時の日本もかなり怪しいものです。
このカメラの一番の難点は、ライトバリュー式が採用されている事で、露出が半固定され容易に露出変更を行い難い点です。当時としては画期的なシステムだったのでしょうが、露出値が変わりやすい外での撮影時には、ライトバリュー式で半固定された露出変更をとっさに行うにはなかなか難しく指が痛くなる作業となります。
写りは色乗りがあまりいいとは言えず、それでいて全体的にマゼンタ・アンバー寄りの、色調にメリハリ感がない写りをします。作例もそれがわかるように色加工はなるべく行っておりません。1枚目の写真はマゼンタ被りがある故に赤の色調(けっして鮮やかではない方向の赤)に特徴がある写真が仕上がります。2枚目以降はもう一台のオートテラスーパーでの撮影ですがこのカメラのレンズは全体的にアンバー色寄りの写真に偏り、やはり全体的な色調のメリハリ感は感じられません。またこのレンズの傾向は特に光が多い環境ほど色調再現が弱い感じがします。
シャッターの操作感は、当時の広告のキャッチフレーズは以下のように書かれています。
「魔法のシャッター!」
Touch-O-Matic
世界最初のワンタッチマジックシステム!
スプリングモーター内蔵
●ただ押して離すだけ!
たとえ片手にタバコを挟んでいても、シャッターボタンに軽くタッチして撮影、その指を離せば撮影済みのフィルムは自動的に巻き取られ、同時に次のシャッターが完全にセットされます。
確かにシャッターの操作感は軽いタッチで押すことができます。これはカメラにとって非常に大切なことで、ブレの少ない写真を撮ることができるからです。しかし、広告の中の「Touch-O-Matic 世界最初のワンタッチマジックシステム!」は何を指しているのかは私は解りません。と言いますのは、スプリングモーター式のカメラは世界では既に製作されており何を指して世界初と言っているのかが分からないからです。また、「たとえ片手にタバコを挟んでいても、シャッターボタンに軽くタッチして撮影」この文面は時代をとても感じさせる好きな文面です。
もし、あなたはこのカメラを手にしこの操作を行ったときには、寝る前に必ず行わなければならなかった儀式、昔の目覚まし時計のゼンマイを巻く操作のことを思い出すことでしょう。
通常、巻き戻しクランクは、カメラの上面の左肩部に設けられていますが、フィルム巻き上げネジと共にカメラの底部にきれいに収められているデザインとなっています。フィルム巻き上げはクランクを手で起こし、軸を必ず1cmほど引き出し、巻き上げしやすい状態で巻き上げを行います(巻き上げクランクの引き出しを行わないとフィルムパトローネのスプロールに巻き戻し軸が入り込まず、巻き戻しクランクを回したとしても空回りする状態です)。この作業が終わったら引き出した軸は元の状態に必ず押し込み、このクランク脇にある裏蓋開けボタンを押すことでカメラの裏蓋が開きフィルムを抜き取ります。
巻き戻しレバーは必ず軸を引き出して、フィルムを巻き戻します。理由としては、巻き戻しレバーを引き出すことにより、フィルム巻き取り用軸が連動して引出され、フィルムパトローネのスプロールの中に入り込み、そこで初めてフィルムを巻き戻すことができます。
巻き戻しレバーの軸をボディーに収めた状態ではフィルムパトローネ用巻き戻し軸がボディに収まっている状態がわかります。フィルムの出し入れの時にはこの状態で作業します。
メーカー説明ではレンズはプロバーF2.8で3群5枚構成、焦点距離は45mm。新種ガラスを採用したため、従来のⅡBに使用していたレンズよりも解像力は格段に向上しています。
レンズは薄いアンバー系と紫系のコーティングで覆われています。
メーカーの思想とは思いますが、各社ファインダーの二重像の形態は違います。基本的な形態はBの長方形タイプで代表的なカメラはライカで、その為か多くのカメラでもこの形態が見られます。ピントを合わせるときには基本的に縦の線状のものを見つけそれの二重像のズレを確認してピントを合わせることが多く、長方形の形態はそういう意味でも合理的な形態となっています。
Cの菱形の二重像の形態はそれほど多くは見られませんがオートテラスーパーではこの形態の2重像を選択しています。4辺の斜線部分で正方形の時のような被写体の縦の線状のズレを合わせることができます。気持ちの部分ですが、菱形の横の鋭角の部分で繊細なピントを合わせることができる気がします。
Aの円状の形態の場合には2重像の面全体でピントを合わせる感じで、レチナⅢCの場合には他のカメラに比べて2重像の面積が大きくなっています。こういった小さい部分でも細かいこだわり、技術、思想を感じる部分がファインダでもあります。
アサヒカメラ 1960年 12月号 寺岡精工所の広告
魔法のシャッター!
Touch - O - Matic
世界最初のワンタッチマジックシステム!
スプリングモーター内蔵
この高性能、この低価格!
カメラ:¥14,500
ケース:¥ 1,300
新発売オートテラスーパー
レンズ:プロヴァー 1:2.8 45m/m シャッター:コパルS.V.L B 1~1/500秒
●ただ押して離すだけ!
たとえ片手にタバコを挟んでいても、シャッターボタンに軽くタッチして撮影、その指を離せば撮影済みのフィルムは自動的に巻き取られ、同時に次のシャッターが完全にセットされます。
アクセサリー群 連続20枚の速写が楽しめるハンドグリップ兼用のグリップモーター。貴方の写界を一層広めるシャープな望遠・広角コンヴァージオンレンズ。美しい写真を創る気の利いた助手にレンズフッド・フィルター。
「Touch-O-Matic 世界最初のワンタッチマジックシステム!」は他社ではこのようなカメラは既に製造販売されていたので正しいフレーズではありません。
オートテラスーパーの広告
オートテラスーパーの掲載記事
(注)この使用説明書は、英文の使用説明書を私が和訳したものですので保証は致しません。あくまでも参考程度にお読みください。
参考文献・参考サイト
・稲垣 実:「オートテラ・スーパーの機構とその特徴」写真工業 1959年9月号
・アサヒカメラ 1960年 12月号 寺岡精工所の広告
・服部 豊:「スプリングモーター内蔵の35mmカメラ オートテラスーパー」カメラレビュー クラシックカメラ専科 NO.25
クラッシックカメラの使い方 35mmフィルムカメラ・ブローニフィルムカメラ編
・TERAOKA NEWS MAGAZINE:「NEW BALANCE」2017.vol.97
ブログ内容はカメラやPCなど、見よう見まねの悪戦苦闘という内容。
オートテラのカメラを調べていますと、必ずここのブログに行き着きます。かなり詳しい情報が書かれています。また資料元もしっかりと掲載していますので元データを調べることが可能になっているありがたいサイトです・
「【銀塩カメラ】中古フィルムカメラの森を歩く」は、銀塩カメラを愛する人へのブログです。高級機は無理ですが、懐かしいカメラ、レンズをご紹介します。ささやかなボクの「イチオシの銀塩カメラ」案内です。
ズノー45mmF1.8付きのオートテラスーパーを紹介しています。