・AGFA AMBI SILETTE
【AGFA AMBI SILETTE】SPECIFICATIONS
製造メーカー名
発売年
型式
画面サイズ
レンズ
ファインダー
露出計
フィルム感度対応範囲
シャッター
シャッタースピード
セルフタイマー
シンクロ接点
フィルム巻き上げ
フィルム巻き戻し
電源
サイズ
重量
販売価格
Agfa社
1956-1961年
距離計連動式レンズ交換カメラ
36mm × 24mm
COLOR-SOLINAR 50mm F28
逆ガリレイ式透視一眼二重増合致式距離計連動式ファインダー
ー
ー
レンズシャッター COMPUR製
B・1~1/500秒
有り
X接点
レバー式
ノブ式
ー
89×124×45mm (開閉時90mm)
533g
ー
作例
感想
AGFA社は自社のフィルムを売るためにジレットシリーズを販売してきました。その後ユーザーの期待に応えるべく「AMBI SILETTE」を本気で製作し販売したことが伺えるカメラだったことは理解していただけると思います。当時はそれでも「Poor man Leica」と呼ばれたカメラらしく、操作感、質感等の問題で言わんとしていることは理解できますが、60年以上経った現代の眼でこのカメラを見ますと、それほどそういうイメージはあまり感じません。それは、交換レンズに対応した切り替え式ブライトフレームでありながらパララックスを自動補正する連動距離計を持ったファインダーと描写力の良いレンズのおかげだと思います。
また、レンズシャッターという制約もありながら、ここまで作り込みがなされたレンズ交換式カメラというものは、それなりに本腰を入れて製作をしなければならなかったためか、こう言うタイプのオリジナルマウントのカメラは、他社では他社では無いわけではないですが、それほど見当たりません。レチナⅢ型はレンズ交換式とはいえ、ボディにはレンズの後玉群が残っており、レンズ交換時の距離計とレンズの距離目盛が連動せず、もう一度レンズの数値をヘリコイドに置き換える作業が必要になり、うまく設計されているとは言えません(レチナⅢCの章参照)。そういうことからも基本的な操作感、ファインダー枠の切り替えから「AMBI SILETTE」は完成されているカメラだと思います。レンズはライカとは違い4本しかありませんが、130mmのレンズを除いての3本は比較的入手しやすく、この3本でも十分に楽しめます。このレンズはライカ マウントのレンズ類には無い写りをしますし、アグファ はライカマウントのレンズは供給していませんのでそういった意味でも面白いカメラかと思います。
難点を言えば、上記でも述べましたがフィルムレバーの操作は撮影をしている時にはとても気になるところです。ライカM3、国産のカメラですとTopcon35 Lまではいかなくても、もう少し軽い操作感にしてくれたらもっと良かったのにと悔やまれるところです。また、ファインダーの二重像もコントラストの鮮明さの割には他社のファインダー操作よりも二重像の合致が判りづらいです。シャッターボタンの位置も本来人差し指が来る位置よりも内側に存在し、人差し指に意識を注がないとシャッターボタンを押す時に空振りする事となります。
このカメラのことを調べようとしても、このカメラの仕様ぐらいを取り扱っている記事はあっても、ページをある程度割いて詳しく書かれている記事、本にはあまり出くわしません(私の調べが足りないのかもしれません)。このカメラは人気がないからその手の雑誌に取り上げられにくく、そのためにこのカメラは意外と安い価格で取引されています。
「AMBI SILETTE」のレンズは素晴らしい写りをしますし、ファインダーも非常に鮮明で、カメラの操作感も基本的に良いです。上記のことからも、もっと評価されていいカメラだと思っています。
35mm判レンズ交換式レンジファインダー・カメラであるアンビジレッテは、アグファの代表的なジレッテシリーズの最高級機です。交換レンズの対応した切り替え式ブライトフレームは撮影距離に対応しています。パララックスを自動補正する連動距離計を備えており、非常に鮮明な採光式ファインダーです。巻き上げは一般的なレバー式で、当時のカメラとしては迅速な操作が可能です。
AGFAが自社のフィルムの写りの良さを示すべく、描写性能に拘ったカメラです。交換レンズは、標準レンズのカラーゾリナー50mmF2.8、広角のカラーアンビオン35mmF4、中望遠のカラーテリネアール90mmF4、さらに専用外つけファインダーを使用する望遠カラーテリネアール130mmF4の4本が用意されていました。これらのレンズの写りは。「カラー」の名前が冠されているようにカラー写真での発色が特に良いのが特徴です。
撮
影
方
法
裏蓋の開閉
裏蓋開閉操作は、ボディの脇下のレバーを押し下げることで簡単に開閉できます。
フィルムの裏蓋には「アグファ のフィルムを使用してね!」というイメージシールが貼られています。
カラーフィルムの基本製品を開発
AGFA社は写真の発展に関しては、カラーフィルム技術の先駆者として多大な功績を残しています。世界初の多層発色内式反転フィルム(つまりコダクローム以外の全てのリバーサルフィルムの基本的方式)、アグファカラー・ノイを1936年に発売します。同じ1936年にこれまた世界で最初にネガからポジカラープリントを得る写真方式(内式多層ネガ・ポジカラー写真プロセス)を開発、1939年からアグファカラー・ネガフィルムを販売しました。
巻き戻し用ノブは2段で引き出しができます。1段の引き出しではフィルムの巻き戻しを行うための操作になります。2段目の引き出しは、フィルムを出し入れするための操作で、この操作により巻き戻しの軸がカメラの上部に収納され、フィルムはフリーの状態になりフィルムを出し入れすることが可能になります。
巻き戻し操作の時には巻き戻し用ノブは2段引き出して巻き上げ作業を行うと、フィルムの軸から外れ空回りしますので、引き出しは1段で作業を行ってください
この時期のカメラにはフィルムインジケーターダイヤルが付いていることが多く、アンビジレッテも例外ではありません。説明書がない状態ですとこの操作はとても解りづらく、私もこの仕組みを見つけるのにしばし時間を要しました。ノブを2段引き上げ、ノブの下の淵にほんの少しだけの歯車状のザラザラが出ており、そこに指の腹を当てダイヤルを回すというシステムです。
フィルムインジケーターダイヤルの表記は「CN、CN17、 CK、 CT、 25°、 21°、 17°、 14°」と見覚えのない表記が出てきます。フィルムの感度表示が英語圏とドイツ語圏ではISO、DINと違うため、このカメラはDIN表示のドイツ語圏のカメラになります。このDIN表示をASA感度にお変換しますと、14°=ASA20、17°=ASA40、21°=ASA100、25°=ASA250となります。
CNは「カラーネガ」・CT「私の想像ですが、リバーサルフィルム・タングステンフィルム」・CKはモノクロフィルムという事でしょうか?正直言って何の略字なのか分かりません。もし上記のことがあっているという前提で整理しますと、
「CN(カラーネガ)、CN17(カラーネガASA40)、 CK(モノクロフィルム?)、 CT(リバーサルフィルム)、 25°(ASA250)、 21°(ASA100)、 17°(ASA40)、 14°(ASA20)」
ということになります。
これはあくまで覚書の表示ですので、この表示を合わせても合わせなくても撮影には問題は生じません。当時はこのようなインディックスを覚書として撮影していたという紹介です。
フィルムカウンターの設定は、カウンター中央部の皿部分に指の腹を押し当てながら回し、任意の数字に合わせます。このカウンターはカウントダウン方式で、フィルムの撮影枚数+3のところに数字を合わせます。
ファインダはそのまま覗いても軍幹部前面にアグファ・アンビジレッテ ロゴ ファインダーカバーがあるために被写体を見ることができません。軍幹部の上方前面にこのカバーを解除するための矢印があります。少しの力でこのカバーを矢印の方向にシフトさせることで、このカバーは上方に上がり、ファインダーから被写体を覗くことができます。
このカメラを触っていていつも思うことなのですが、このカバーは本当に必要だったのかな?ということです。もしかしたらユーザーの中には、このカバーをあえて外してしまって使用している人もいるのかもしれません。私は分解するのが面倒なのでそのままにしていますが、本音は外してしまいたい派です。このカバーは当時のセレン露出計のカバーにヒントを得て付けられたような気がします。
アグファのジレッテシリーズのカメラには、自社のマークはつけられていても、カメラの名前の刻印はされていませんでした。AGFA社ではアンビジレッテのカメラにレンズシャッター式でレンズ交換もでき、最高級のファインダーも搭載させ、ファインダー枠もスイッチできるという設計を行い、是非このカメラにはカメラ名を入れたいと思ったことでしょう。通常のカメラの名前は軍艦部の上面に刻印されることが多いのですが、アンビジレッテ にはファインダー枠切り替えスイッチとアクセサリーシューが設置されているために、それができません。また、ファインダーカバーが開いた状態のアンビジレッテのファインダー部は楽屋裏みたいな見た目で決して美しくはありません。そこで苦肉の策としてファインダーカバーを設け、その前面にAGFAロゴとカメラネームを入れ一石二鳥を図ったのではないかと想像できます。
このファインダーカバーのロゴ部だけのメッキは弱く、年月と共に擦れ、地肌が出ているものが多くみられます。私の個体もメッキがすり減り、半分地肌が出ている状態です。とはいえ、メッキの種類が違うと思われるカメラ本体の他の部分はそのような状況のところは見られません。これはこのプレートの部分だけ別パーツになっており、このカバー本体にメッキの品質の違うエンブレムだけが接着されているために、このような状況になっています。
ブライトフレームファインダー枠は35、50、90mm切替式でパララックス補正も設計されており、距離計と連動してフレームが上下します。ライカM型はレンズ交換と共にファインダーが切り替わりますが、アンビジレッテの場合には軍幹部のスイッチにて手動式でファインダーを切り替えます。ファインダーの色は全体的にはアンバー系の色調で、二重像、各枠は緑で、補色系の対色効果で綺麗です。二重像の形態は通常は長方形または菱形になっていますが、アンビジレッテの場合には円形です。二重像の形態が違うことにより見え方に支障があるかと言えば、そこに関しては四角、菱形出慣れているので若干違和感がありますが、鮮明なファインダーですので慣れれば問題はありません。
実際にこのカメラを使用したときの感想ですが、二重像はマゼンタ寄りの全体のファインダーの色に緑色の二重像は鮮明で合わせやすそうですが、ファインダーの倍率の問題なのか判りませんが色のコントラストは鮮明なのですが二重像のキレがあまり良く無く、同じ時期の日本製のカメラのファインダーの方が二重像のキレがいいと思います。
ファインダー切り替えスイッチで50mmのところに設定しますと、50mmの場合には35mmの枠も一緒に表示されます。35mmのところに設定しますと、50mmの枠は消えて35mm枠だけのすっきりとした表示になります。90mmのところに設定しますと、35mm、50mm、の枠は消え90mmだけの枠が表示されます。
アンビジレッテの交換レンズは35, 50, 90, 130mmの4本ですが、130mmレンズ装着の場合には、カメラ内のファインダーでピントを合わせ、外付けファインダー装着して構図を行います。余談ですが130mmは数が少ないため市場では滅多に目にすることはありません
このカメラを撮影していて気がついたことがありました。それはこのカメラには収納スタンドが存在するということでした。アンビジレッテの撮影時にこのカメラは重心バランスが悪く前のめりになって、なかなか自立することは難しく、撮影には苦労をしていました。ふと、カメラをひっくり返してみますと、なんか可動部があるなと思い指の爪をひっかけてスライドをさせますと、スタンドが出てきて、それによりこのカメラは自立できることを発見しました。今まで革ケースに入れての撮影と、ケースから外しても寝かせるように裏蓋側をテーブルに置くことが多く、そのことに気がつきませんでした。このようなシステムは、ツァイスイコンのコンテッサにも似たようなシステムがあります。
巻き上げレバーは巻き上げストロークが長く、ラチェット巻き上げ(段階巻き上げ)はできません。そのために何らかの理由で巻き上げ途中で手を離すと勢いよくパチンとボディ側に戻ります(まるで幼少期に買ったガムパッチンのようです。)。巻き上げレバーのバネの反発力は強く、通常のカメラの巻き上げよりも力が必要で、重く感じます。あえて他の機種に例えるならば、Topcon 35-Sのような巻き上げ感です(Topcon 35-Sの巻き上げ感より若干軽い感じ。(注)Topcon 35-LはTopcon 35-Sとは違い、非常に巻き上げ感は素晴らしく、LEICA M3よりも軽いです)
シャッターはとても軽い感触ですが、シャッター音は頼りなく、シャッターボタンの位置は人差し指が来る位置より内側にあり素直にシャッターを押すには多少無理があります。人差し指を意識してシャッターボタンの位置を確認しないと、ファインダーを覗きながらシャッターを切ろうとすると、シャッターボタンを探してシャッタータイミングを逃すことになります。
何気ない操作ようですが、巻き上げ操作の重さと、シャッターボタンの位置の問題は、意外と撮影していてストレスになります。
巻き戻し用ノブは2段で引き出しができます。巻き戻しの場合には1段引き出しを行います。巻き戻しノブを1段引き出した後、スプロケット解除ボタンを押しながら矢印の方向にフィルムを巻き戻します。2段目の引き出しは、フィルムを出し入れするための操作で、この操作により巻き戻しの軸がカメラの上部に収納され、フィルムはフリーの状態になりフィルムを出し入れすることが可能になります。
このカメラの最大の魅力はレンズ交換ができることです。そして、これらのレンズは自社で製造しており写りが非常に良いということです。AGFA社は自社のフィルムを売ることを第一に考えていましたので、自社のカメラで撮影したフィルムが最高のパフォーマンスを生み出せるようにレンズ設計をしたはずです(ここに関してはコダック、フジフィルムも同じです)。
レンズのマウントはアグファ独自のマウントですが、あまりスムーズに外すことはできません。レンズの下のボディの四角いボタンをすことによりロックが解除され、レンズを時計の反対周りに少しを回しボディから外すことができます。
レンズを装着する時には、ボディの赤い点と、レンズの赤い点を確認し、それを合わせるよう装着し、カチッとロック音がするまでレンズを時計回りに回転させます。
これらのレンズの写りに関してはどの資料を読んでも高い評価が付けられています。もし、あなたがこのカメラを入手して実際に撮影し最初に現像されたプリントを見た時には、その写りにきっと驚くと思います。50mmレンズは、赤の発色が他社のレンズに比べて独特の色調です。その色は決して安っぽい赤ではなく、深みのあるような独特な赤色を持っており、あえて赤の色の入った被写体を撮影したいと思わせるほどです。
専用カメラケースの裏側には以下のことが書かれた革が貼られています。
Tele abnehmen!
Remove Tele Lens!
Ôter le télé!
上からドイツ語、英語、フランス語で「望遠レンズを外せ!」と明記されています。
AGFAレンジファインダーの
ドイツ語のパンフレット
参考文献
・AGFA AMBI SILETTE Instructions for use :AGFA CAMERA・WERK AG. MUNCHEN
・西ゆうじ:「クラシックカメラ劇場」クラシックカメラで撮る楽しみ 主婦と生活社
・西ゆうじ:「クラシックカメラ物語」 主婦と生活社
・カメラレビュー クラシックカメラ専科 NO.42 モダンクラシック・ドイツ編 朝日ソノラマ社
・根元泰人/季刊 analog 著:世界ヴィンテージ・カメラ大全 東京書籍
参考サイト
ここにはドイツのカメラの壮大な歴史があります。ここの宿主は多くのカメラコレクターであり、バイヤーでもあるようです。日本のサイトだけでは決して調べることができないカメラの歴史を調べることができます。
中古カメラアクセサリーとジャンクカメラ 我楽多屋。他の中古カメラ店ではあまり扱わないような古いカメラや壊れたカメラ、中古のカメラアクセサリー(フィルター・フード・ストラップ・ケースなど)をたくさん取り揃えています。
というサイト。